京都市は、未来の京都のために残したい京都らしい「眺望景観」を、広く国内外から募集することにしました。集めた「眺望景観」の中から100箇所程度の空間を選定したうえで、借景を阻害する高層建築を抑制するためのガイドラインを作成し、これをもとに2006年度にも条例化するようです。
今回のガイドラインづくりは、美観地区や風致地区などで面的な高さ規制を行っている現在の景観保全策をさらに進化させ、特定の場所、つまり「点」から見える空間を、まるごと保全しようとする試みです。
現在、京都市の行っている景観整備制度では、お寺や名所旧跡などの周辺を風致地区や美観地区などに指定しており、これは、用途地区や高度地区などの都市計画法に基づく規制があるところに、さらに厳しい建築制限(高さ、建ぺい率、意匠)をかけようというもので、公共の利益のため、私権が厳しく制限されているものといえます。
例えば、高度地区で20mの高さまで建築可能であっても、風致地区に指定されていれば15m(1種地域は8m)までに抑えられてしまう。マンションを建てようと思っている人がいるならば、階数がガラッとかわり、収益率が激変することでしょう。
しかし、これも「古都の景観保全のためなら行過ぎた規制とは言えない。」となるわけです。ただし、私権を制限するものですから、条例できちっと定める必要がある訳です。ご存知とは思いますが、条例制定には、市議会での過半数以上の賛成が必要。その市議会の構成員である市会議員は、市民が選挙で選んでいる方々です。ですから、今ある条例に対して個人的にいくら不満があったとしても『市民の多数決で決めたことですから守ってください。行政が勝手に決めたことではありませんよ。』となるわけです。さらにしつこく説明すれば、条例の制定手続きは、地方自治法で定められていますから、この法律も国会議員の過半数の賛成多数で議決されている訳で…。

今回の「点から見える空間を守る」という試みが何故京都市で始まったのか?そのきっかけが何なのか解かりませんが、同じ京都府内の宇治市では、大失敗があるわけです。10円玉の絵で有名は宇治の平等院鳳凰堂の借景を2棟のマンションが壊してしまったのです。
条例をはじめとする法制度は、制定前に着手されている行為の規制は不可能ですから、建てる段階になってから「これから条例をつくる予定ですから低いマンションにしてください。」とはならないわけです。事業者もそれなりの収益率を見込んで投資している訳ですから、「お願いします。」では話は付かないでしょう。マンションの開発事業者やそのマンションに入居する予定の方には基本的に責任はないと言ってよいでしょう。最後は、「政治的な解決」つまり、市が土地を高額で買い取るしか方法はないでしょう。話が付けばの話ですが…。実際は、つくでしょうね。その理由は、役所が許可を出さない!と言ってきたことに対して、「訴えてやる!」と怒ったところで、今の裁判制度は無茶苦茶時間がかかりますから、収益の回収が先延ばしになり、その間銀行に利子を払うことになってしまいますから。
もちろん「点からの借景空間」を守ろうとすれば、広範囲に渡って規制が必要となり、土地所有者に多大が影響を及ぼします。土地の価値が下がることもあるでしょう。ガイドラインを発表したとたんに駆け込み的に開発が行われてしまう可能性もあるでしょう。その際に京都市はどうするか?条例制定前であっても超法規的に開発を認めないという方針に打って出るのでしょうか?
例えば、「円通寺の庭園からみた比叡山の借景空間を守りましょう」となれば、それは素晴らしいことでしょうが、円通寺と比叡山との間には、広大な土地が広がっている訳です。最もこの地域は既に風致地区に指定され、一定の制限がかけられているのですが、これらの土地全てにさらなる制限をかけるとなれば、ものすごいことになります。
こうなると円通寺の借景空間そのものも一寺院だけのものとは言えず、拝観料をそのままごっそりとお寺のものとなるというのも疑問です。
京都市に景観基金のようなものを設置して、ここに拝観料から一定割合を投入し、この景観基金を活用してさらに景観整備の調査・研究・施策の充実に役立てるべきと私は思います。
それにしても京都市はすごいことに足を踏み入れました。100箇所とはいえ、各寺院からは、当然「私のところの借景を守るようお願いします。」という依頼が殺到するでしょう。京都を愛する日本全国の京都ファンからも様々な意見が飛び交うでしょう。さすが京都市です。他都市ではあり得ません。景観整備についていえば、間違いなく先進都市といえるでしょう。
いずれにしても、京都市が京都市民が日本国民が、この問題について、どのような反応・関心を示し、結果としてどのようなものになってゆくのか。「未来の京都の歩んでゆく道を占うぐらいの事業だ!」と言えば大げさでしょうか?「やっぱり、京都は注目されているんだな。京都をもっともっと大切にしてほしいとみんな思っていたんだ。」ということを再確認できるような結果になることを期待したいです。
「眺望景観」の応募は、所定の用紙による郵送か、電子メールで受け付けされています。一人何点でも応募できます。保全したい景観のカラー写真に、撮影場所、対象物、撮影日時、選んだ理由などを添えてください。もちろん撮影場所は京都市内に限定です。宇治の平等院鳳凰堂はダメです。宇治市の景観規制は、京都市でできません。当たり前ですね。失礼しました。
応募写真は返却されませんのでご注意を…。締め切りは3月18日。問い合わせは京都市都市計画局風致保全課まで。
風致保全課のホームページへは、こちらから。